Meihua's English Diary

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zoom RSS 愛されるために、ここにいる

<<   作成日時 : 2007/03/29 16:17   >>

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ジャン・クロード、50歳。職業、執政官。裁判所からの命令に従い、他人の生活に死刑宣告を下す。
先日は、家賃6000ユーロあまりを滞納した不幸なマダムに、家財の差し押さえを宣告。
「どうしたらいいんですか?」恋人に出て行かれたばかりで、一人暮らしらしいマダムは、途方にくれた。今にも泣き出しそうだ。
けれど、彼にはどうすることも出来ない。人に好かれる仕事じゃない。彼は、自分の職務を忠実に遂行しているに過ぎない。
行く先々で出くわす人の痛みと苦しみが彼の心を、長年の間にじわりじわりと蝕んできた。
人の心に育つはずの温かいものは、彼には与えられず、彼から他人に与えられることもなかった。

家族はいない。別れた妻との間に息子が一人いるが、その関係は上手くいっていない。いつもおどおどしている息子。
また自分自身、老人ホームに入っている父親との間に深い溝があった。看護師達も手をやく、我儘で頑固な父親。
それでも我慢して、毎週日曜日はホームの父親を訪ね、一緒に過ごしてきた。
会えばこっちの都合も何も考えず文句ばかりを口にする。

もう、うんざりだ。

人生に疲れた。

この先もこんな日々が続くだけなのか?



主人公の男性、顔の造作は確かに整っています。が、しかしどう贔屓目に見ても、現在の彼はカッコいいとは程遠い、くたびれきった中年男。

仕事柄、毎日折り目正しくスーツを着込んでいる彼ですが・・・
単に皺がよっていたり、よれよれのスーツだったら、クリーニングにでも出せば元に戻ります。しかし、彼が身に纏っている人生は、パリッとしているものの、どこもかしこも擦り切れてしまったそんなスーツ。
体にすっかり馴染んでしまい、分かっていてもなかなか捨て去ることが出来ない。

人生の折り返し地点も過ぎ、失意の中で、好きでもない仕事を繰り返し、休みの日には偏屈な父親の相手。
心が悲鳴をあげていても、それをどうやって表に出したらいいかさえも知らない、心情を吐露する相手もいない。

どこから、どう見てもダメな中年男です。
そんな彼がカッコよく見えるから、とても不思議です。これぞ、フランス映画マジックなのでしょうか?
ダメさ加減が「哀愁」と「色香」に変換されてしまいます。



一人のダメ紳士が、自分の殻を破り、思い切って新しい世界へと踏み出す、そんな勇気を手に入れるまでを、情感たっぷりに、官能的なタンゴの調べにのせ、美しく描いた大人の恋のお話です。


☆以下、太文字以外ストーリーが含まれます。


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自分のオフィスの窓から、ただジーッと眺めていた向かいのビルのタンゴ教室。
なんとなく心惹かれるものはあるものの、その世界へと入っていく気なんてサラサラなかった彼。
運動不足を解消するために医者からスポーツをと勧められ、思いついた先がタンゴ教室。
彼を変えたのはタンゴ教室で再会したフランソワーズ。


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官能的なタンゴの調べにあわせて、二人はだんだんとお互いを意識し始めます。
最初はぎこちなく、ただ体を寄せ合い、相手のリズムを感じるだけのダンス。

二人のダンスシーンは、何よりも多くのことを語ります。
その相手は勿論、お互いであり、そして観客にまで二人の声にならない声が届きます。


偶然が重なり、だんだんと恋に落ちていく男性。
彼女が部屋にくるのに、スーツを着たまま掃除機をかけたり、香水売り場で商品名にまで気を使って(変な誤解をされないように)プレゼントを真剣に選ぶ様など、冷静に傍から見たら滑稽な仕草がとてもチャーミングです。


彼女も、いつの間にか彼に惹かれている自分を抑えきれずになっていきます。
けれど実は彼女には、婚約者がいたのでした。
結婚披露パーティーで新郎と踊るために通い始めたタンゴ教室。しかし、婚約者は仕事で忙しく、教室に何度誘ってもやってこない。
淋しさからか、運命なのか、そこで他の男性に惹かれ始めてしまう。そんな自分に戸惑いながら、情熱的なタンゴに突き動かされてか、とうとう彼と口付けを交わしてしまう。
彼女は大いに悩みます。


結局、彼の幸せはアッと言う間に終わってしまいました。
タンゴ教室の仲間から、彼女の結婚を聞かされ、彼女からは「お友達でいましょう。」と。
「冗談じゃない。」彼は彼女に二度と会わないときっぱりと伝えました。
タンゴ教室も辞めてしまいました。


けれど、そんな彼に助言をしたのが長年事務所で一緒働いているマダム。
彼女と彼の会話を盗み聞きしていたのです(笑)
昔彼女にも、結婚前に心を惹かれた別の男性が出来た。けれど、自分は世間体を気にして、今の彼女と同じようにその男性に「友達でいよう。」と告げた。
結局、ひとりになった。その彼のことが忘れられなかったから。


「あの言葉は彼女の本心ではない。彼女はあの時の私。もしも勇気を出していたら、私は今頃誰かと一緒にいたはずでしょう。」


ラストシーン、タンゴ教室で窓にもたれ、ぼんやりと佇んでいたフランソワーズの顔が、一瞬にして華やいだ彼女本来の笑顔を取り戻します。
きっと、教室に飛び込んできた彼を見つけたのでしょう。
バックに小さく流れていたタンゴのボリュームが一気に跳ね上がります。
拍手したくなるくらい、カッコいい音楽の入り方です。


そして二人はタンゴを踊ります。
それまでの二人のダンスとは明らかに違う、抑えていた感情を解き放ち、心の赴くままに相手に身をゆだね、相手を感じる。
静かな動きとは裏腹に、熱い感情が溢れんばかりの二人のダンス。
ダンスで表現してきた二人の繊細な恋心は、こうして見事に幕を閉じます。


もう、文句のつけようがない、素晴らしい映画でした。
見えない鎖に縛られた、愚かしくも、愛しい大人の恋と人生。
映画全体を通して、張り巡らされた心地よい緊張感。
使われている音楽もとても素敵で、この映画の主人公その3と言っても過言ではありません。
あれらの音楽があったからこそ、この映画が成立するわけで。
どうしたら、こんな素敵な物語が作れるんでしょうか?
無茶苦茶久しぶりに、フランス映画の王道をいきつつ、そこに新しい命を吹き込まれた上質な映画に出逢いました。
これぞフランス映画の色ね〜と個人的にかなり懐かしさを覚えました。
こういう映画を見せられると、またフランス映画を見ようかなと思ってしまいますね。


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http://www.cetera.co.jp/tango/

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